熊本の居酒屋でー。■熊本は市内花畑町に小さな居酒屋がある。うっかりすると見過ごしてしまう。12坪24席の店だ。オープンしたのは2004年8月31日。120種類の焼酎を揃えているというから嬉しい。年中無休。夕方6時から翌朝7時までの営業というだけで驚いてしまう。普通の人達の暮らしのなかの喜怒哀楽を毎日見続けているわけだ。深夜に、明け方に、泣きながら入って来た人もいるだろう。怒りに震え、酒にくやしさをまぎらす為に男が一人やってきたこともあるだろう。それぞれの人のそれぞれの人生ドラマ。居酒屋という舞台で居酒屋の主人とそのスタッフの配役をメいっぱい演じて生きている。飽きもせず、諦めず、日々お客さんの心に灯をともす仕事だ。そのことに深い同情と畏敬の念を抱く。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■「何か店長、お勧めの焼酎はないの?」。そう言うお客さんには決まってわざわざ馬路村から取り寄せた柚子果汁「ゆーず」を入れた「柚子割り焼酎」を出してくれる。高知は馬路村からわざわざ、なぜだろう。「私が美味しいと思ったものは手間がかかっても取り寄せています」「お客さんにも美味しいものを飲んでもらいたいじゃあないですか」。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■ところでなぜ居酒屋なのか、小西オーナーに聞いてみた。「うちは母子家庭でしてね。叔父が飲食店をやってました。子ども心に叔父の仕事にあこがれてましたね。だだ、私は親を泣かしたらいかん。その気持ちは強かったんです。親の勧める通り、大学に進学、一流と言われるゼネコンに就職しました。結婚して子どもが出来てハッと思ったんですね。私は親の為に親の望む安定した大手メーカーに就職した。「この子は親の為に自分のしたい仕事をあきらめなくてもよか」。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■気がつけば小西さんは30歳になっていた。「会社を辞めて居酒屋をする」。そう言った時、みんな猛反対した。不透明といわれる時代、安定した職場をなぜ辞める。最後に奥さんに相談した。「毎日遅くまで働いて、疲れた顔をして帰って来る。前のあなたはもっと輝いていたわよ。あなたの好きなことをしたら」。妻が一人背中を押してくれた。■その頃、大学の時の友人が熊本で居酒屋で大成功していた。妻と子どもは実家の福岡に帰し、一年間、友人の居酒屋で働くことにした。食材や酒類の倉庫に寝泊りした。一年半後には自分の店をオープンするんだ、という目標だけで、踏ん張った。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■「同級生の下で働いて、お前にはプライドはないのか」「年下のバイトの子にアゴで使われてお前は悔しくはないのか」。そんなことをいっぱい言われた。明確な目標を夢を持っているからだろう。そんな細事は全く気にならなかった。仕込みから翌朝7時まで、交代なしで働いた。それは志願したことだった。自分に妥協しない。それは支えてくれる家族への約束だった。「辛くなかったか、といえば嘘になります」。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■今度、この小さな店が参加対象236店の参加した2006年第1回「居酒屋甲子園」の日本一に輝いた。全国に居酒屋は15万軒あるそうだ。「NPO法人居酒屋甲子園」の主催。大会会場の日比谷公会堂には2000人が集まった。「居酒屋は夢を語る場」「外食産業が変われば日本が変わる」。決勝大会に進出した居酒屋がそれぞれにプレゼンテーションをする。「憲晴百が日本一!」、その瞬間、メンバーは飛び上がって喜び、小西オーナーは感動で身震いがしばらく止まらなかった。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■「居酒屋甲子園」にエントリーすると50項目に及ぶ「覆面モニターチエック」がある。小西さんは言う。「いわば、お客さんが私の代わりに社員教育してくれるわけです」「クレームは私が注意しなくてもお客さんが言ってくれる教育ですから」。■笑顔ができない子が職場に入ってきた時。「君は笑顔がかわいいね」と何度も繰り返し言うそうだ。「言い続けると、いつの間にかホントいい笑顔になりますね」。なるほど、日々の実践での学びだから説得力がある。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■単なる酒屋ではない。居心地のいい空間、だから居酒屋なのだ。「私はこの小さな店を、お客さんの夢のいっぱい詰まった店にしたいんです」。職場のメンバーに、お客さんに、小西さんはいつも問いかける。「あなたの夢はなんですか」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜■
http://www.kenhappyaku.jp/居酒屋「憲晴百」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜